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40過ぎてますけど何か?

うさぎさんのお遍路道中記

作成日:2014年02月28日 訪問日:2012年09月22日
67番札所 小松尾山大興寺


雲辺寺を無事に打ち終え、荷物のお接待に駆け付けてくださった先達の辻さんと別れ次の札所へ向かう。
緩やかな登り坂には、立派な五百羅漢が立ち並んでいた。
辻さんから
「五百羅漢の中には、知り合いに似た顔が必ずあると言われている。」
と聞いていたので、一体一体お顔を眺めながら歩いた。
あっ、あの顔は!
あっ、この顔は!
あ?、これは本物。
などとバカな一人事を言いながら歩いていると、前方から二人の男女がやって来た。
「今から下るんですか?」女性に聞かれたので、「はい」と答えると、「今この先がどうなっているのか見に行ったら凄い山道だったわよ。」とおっしゃる。
お二人は車で観光に来ているらしく、私一人で山に入る事が信じられないようだ。
挨拶をして別れたが、お二人は大丈夫なのかと言わんばかりに、何度も振り返っていた。

県境に沿って登って行くとだんだん薄暗い山道に入り、道が急に下り坂になった。
石や木の根っこで足場はかなり悪い。
ここ数日雨が降っていないこともあり、滑るような所は無かったが、雨が降る日は滑りやすく更に危ない道になるのだろう。
今回、幾つかの山越えはあったが、すべて晴天。
きっと軟弱な私のためにお大師様が歩きやすいよう「晴れ」にしてくださったに違いない。
お大師様の気が変わらない内に、早目に下山しよう。
幸い、荷物はさんや袋に入れたお菓子、お茶、遍路地図に納経帳だけだ。
身軽な私は軽快に下り坂を駆け抜ける。
が、一キロも下ると膝が痛くなった。つい、調子をこいてしまったのだ。
目の前に木製のベンチがあったので座って休憩することにした。
すると山の斜面にキノコを発見。なんだか美味しそうな色をしている。
あっ、あっちにもある。こっちにも。周りをよく見ると、キノコ畑のように鈴なりなのだ。
辻さんのお土産に採って行こうかと思ったが、笑いが止まらないキノコかも知れないので、写真だけにしておいた。
こういう自然を守るには、むやみやたらに山の物を取ってはいけない、地元の熊野古道に書いてあったことを思い出す。
「とっていいのは写真だけ。残していいのは足跡だけ。」
さあ、先に進もう。

急な坂をしばらく歩くと、前方にワイワイ楽しそうに下っていく60代と思われる男女合わせて10人ほどの団体さんを発見した。
直ぐに団体さんに追いつく。
団体さんは私に気付く事無く、おしゃべりしながら下りていく。
仕方がないのでしばらく後ろから同じペースでゆっくり下りることにした。
すると一番後ろの男性が私に気付いて驚いた拍子に「あー、ビックリした!」とでっかい声で叫んだので、皆が一斉に振り返り私を見た。つい私も一緒に振り返ってしまう。
今度は、全体止まれで、私に向けて質問攻撃だ。
一人なのか、どこまで歩くのか、どこから来たのか。
この旅に出て必ず聞かれるお決まりの質問に、よし来たとばかりに間髪入れず答えた。
「名古屋からきた一人歩きの区切り打ち遍路です。今日は雲辺寺を打って、この先観音寺まで行こうと思っています。以上!」
誰かが言う「おい、道をあけてやれ」号令がかかると、一斉に皆さんが細い山道の両サイドに寄り、道を譲ってくださった。
「頑張って」と口々に応援の言葉を言ってくださる中、空けていただいた花道から颯爽と再び下りだす。
後ろから「まぁ、さすがに若い人は軽やかで早いわね。」と話しているのが聞こえた。
「ふっふっふ、40過ぎてますけど、何か?」と心で呟きながら先を急いだ。

どこまで行っても下りの山道は続いていた。
しばらくすると山の空気と少し違うのを感じた時、生い茂る木々の間から稲穂いっぱいの田んぼが見えた。
山道が終わり、見渡す限りの田んぼ広がる車道に出たのだ。
そこには自転車を置いて今から雲辺寺へ登ろうとする二人の若い男性がおり、私の姿を見ると「雲辺寺からどれくらいかかりましたか?」と質問してきた。
時計を見て「1時間20分です。」と答えると、お礼を言い登って行った。
山道が終わり穏やかな秋晴れの道を歩き出す。
が、ふと思い立ち止まる。
さっきの二人、これから登るのに私の下りの時間を聞いて果たして参考になったのだろうか。
まあ、若い二人だから大丈夫だろうと、気にせず進むことにした。
近くには小さな集落がありお祭りなのか、一軒のお宅の広い駐車場スペースにゴザを敷き、宴会をしていた。とっても長閑な光景だ。
私の姿を見つけ「頑張ってよー」と声援をかけてくださった。

あと5キロほどで辻さんの待つ大興寺。
頑張って歩く。
今日も暑く、汗だくだ。もう秋なのか、時折吹く風が心地よく、正午の影が少し長くなってきたように感じた。
前方を見ると辻さんが歩いて迎えに来てくださっていた。合流し、一緒に歩き出す。
午後12時半、67番札所大興寺に到着した。
周りを田んぼに囲まれた大興寺は穏やかな佇まいで、大きなクスノキが目印だ。
山門で一例し、本堂へ向かう。
ここにも車遍路さんがたくさんおり、遍路の季節を思わせる。
本堂では家内安全、大師堂では今日も辻さんにたくさん助けていただいた事をお話し、辻さんの無病息災をお願いした。

納経を済ませると時刻は午後1時になろうとしていた。
どこかでお昼にしようということで、車で数分走ったところにあったうどん屋さんで食べることにした。
お礼を兼ねて、とても安価なうどんではあったが、辻さんにお接待させていただいた。
うどんは美味しく、ボリュームがあってお値打ちだった。
満腹になった私を再び大興寺まで送ってくださり、辻さんとはここでお別れすることになった。
数日間、大変お世話になった辻さん。
辻さんの助けが無ければ、雲辺寺も横峰寺もこんなに順調には越えてこられなかっただろう。
本当に感謝してもしきれないくらいだ。
お礼を言うと、「この先も無理の無いように頑張って」そう応援の言葉を残し、先達の辻さんは帰って行ったのだった。

 
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ずーっと続く五百羅漢。笑ったり、怒ったり、踊ったり、表情もポーズも面白い。

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きのこの山

きのこの山


長い下り坂、次の札所まで6.6キロ。下りが延々と続くと膝と足先が痛くなる。

長い下り坂、次の札所まで6.6キロ。下りが延々と続くと膝と足先が痛くなる。


木々の間から時折見える絶景

木々の間から時折見える絶景


下り始めて一時間半、山道が終わり田んぼ広がる車道へ。お数珠ブレスは歩くたびに頂いてどんどん増えていった。

下り始めて一時間半、山道が終わり田んぼ広がる車道へ。お数珠ブレスは歩くたびに頂いてどんどん増えていった。


正午の影がだんだん長くなる

正午の影がだんだん長くなる


稲穂実る秋。でも、お遍路は汗だくです。

稲穂実る秋。でも、お遍路は汗だくです。


大興寺近くのうどん屋さん

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