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お・た・ん・こ・な・すぅ

うさぎさんのお遍路道中記

作成日:2014年02月06日 訪問日:2012年09月22日
66番札所 巨鼇山雲辺寺


三角寺からしばらく歩いた所で、増田さんご夫婦のお二人は真っ直ぐ行き、私は右に続く道を下った。
しばらく歩いていたが、遍路シールが一向に見当たらない。
200メートルほど下ったところでやっぱり不安になりお二人と別れた道まで戻った。
遍路用の標識ではないが、番外の常福寺まではこの道を行くような標識があった。
また同じ道をくだる。遍路地図を見てもどこを歩いているのか分からなくなってしまったのだ。
歩けど、歩けど、遍路シールは無い。
田んぼや畑が広がり、所々に民家はあるものの人は歩いていない。
すると軽トラックが前方から走ってきた。道を聞こうとしたが走り去ってしまったので、仕方なく歩く事にした。
間もなくして先ほどの軽トラックが戻ってきて私の横に停まった。
30代くらいの男性で、私の姿を見て、ご自宅に冷たい缶ジュースを取りに行ってくださったのだ。
冷蔵庫から出したばかりの冷たいジュースを二本もお接待してくださった。
お礼を言い、 道を聞こうとしたら、お兄さんは話し出す。
「宗教に興味はありますか?仏教もいいけど、ぜひこの本も良い事が書いてあるから、興味があったら読んで見てください。」そう言い、本の表紙をコピーしたものを渡してくださり、風のように去って行った。
呆気にとられたまま、コピーを手に持ち立ち尽くす。
肝心の道が聞けなかった。
ため息をつきながらまた歩き出す。
ため息をつくと、幸せか逃げてしまうと聞いたことがある。
少しの幸せなら逃げてもいい、誰か道を教えてください。ここがどこなのか。
しばらくトボトボ歩いているとバス停が見えた、駆け寄ると「西方」と書いてあった。
遍路地図を念査する。
あった、あった、西方のバス亭。
なかなか良いところを歩いていたことが判明した。
道が分かればお手の物だ。
一気に遍路道に出て、いざ椿堂へ。

半田休憩所を通過し、車道から急に田んぼ道へ遍路シールは続く。
小さな滝のある川沿いに出て田んぼのあぜ道を歩こうとしたら、この旅初めて靴ひもが解けた。
直ぐに気づき、しゃがんで結び直す。
御杖を持ち直し歩き出した瞬間、今度はなんと白衣の内側の紐と外側の紐が同時に解けた。
その瞬間、背筋がゾクッとする。
何だか胸騒ぎがし、何かわからないが気配を感じた。
周りを見るが誰も居るはずもなく、川の音しかしない。
怖くなり慌てて走り出す。夢中で走って車道に出た。
怖い、怖すぎる。
解けるにしてもこんなに何か所も重なるものなのか、偶然にしてはおかしい。
もしかして、、、そう思うと急ぎ足になった。
怖い思いをしながら午後2時半、番外常福寺の椿堂に到着したのだ。

増田さんご夫婦の車を見つけ駆け寄り、ホッと一安心しザックを受取った。
今日一日のお礼を伝えると、困った事があったら遠慮なく連絡をするように言ってくださった。手を振りお別れをした。
本当に優しいご夫婦だった。
紹介してくださった伊吹さんにも感謝せねば罰が当たるだろう。
大切なお二人の時間を私の為に使ってくださり、本当にありがとうございました。

久しぶりに重いザックを抱えて境内に入る。
境内には既にタクシーお遍路さんがたくさんお参りをしているところだった。
大型のタクシーが二台、普通のタクシーが二台。結構な団体さんだ。
順番を待つ間、この椿堂に着いたら先達の辻さんに電話する約束だったので、早速電話すると、遅かったねと言われてしまった。ごめんなさい。
納経したら雲辺寺の登山口を目指して進むよう指示を受けた。これから私を探して拾ってくださるそうだ。
本堂で家内安全、大師堂で増田さんご夫婦の無病息災をお願いし、納経をしていただく。
納経所には若くて綺麗な女性が居て、納経が済むと「歩きですか?」と聞かれた。
「はい」と答えると「納経代はご接待です。それと、これをどうぞ。」と缶コーヒーを手渡してくださった。この旅初めての納経代金のお接待だった。
お礼を言い、手に握っていた納経代金に少し足して椿の絵が可愛い手ぬぐいを二枚買うことにした。
ベンチに戻り、ザックにさんや袋を詰めて、出発の準備をする。
そう言えば、先達の辻さんから、境内にあるお地蔵さんのエプロンをめくれと言われていたことを思い出す。
ベンチの近くに三体の形の違うお地蔵さんがあったので、めくってみた。
めくってみて、あごが外れた。 
「これは、、、大変な代物だ。」出た言葉がこれだった。
気を取り直し、ザックを担いで歩き出す。
時刻は午後3時過ぎ、もう夕暮れ時だ、急がねば。

歩き始めて15分ほどすると、辻さんの車が現れた。
ザックを積み込んでもらい、冷たいコーヒーをお接待してくださった。
5分ほど冷房の効いた車内で休憩し、辻さんが用意してくれた小さめのリュックをお借りして、お茶とお菓子だけ持って再び歩き出す。
明日の雲辺寺登頂を考え、登山口まで今日の内に歩いておいた方がいいからだ。
ここからの二時間が辛かった。
緩やかとはいえ、延々と続く坂道、夕方の境目峠越えの山道。
そんな中、所々で辻さんの車が待っていて応援してくれる。時には一緒に歩いてくださった。
ザックを一日中背負って歩けば、ここまで来れなかっただろう。
辻さんや増田さん、応援してくださる皆さんのおかげでこうしてここまでやっこれた。
そう思うと夕暮れの山道も怖くなかった。
午後5時20分、雲辺寺口のバス停に到着することができた。
私的には、もう雲辺寺を制覇したくらいの疲労感だったが、明日は本物の雲辺寺アタックが待っている。
辻さんの車に乗り込み、一路徳島に向かう。
今夜は、辻さんのお接待でご自宅の近くのホテルに泊めていただけるという。
しかも、夜は辻さんの奥様と、遍路でご一緒した川原さんが来てくださるのだ。
香川まではるばる来てくださり、申し訳ないと話すと、雲辺寺は香川のお寺だけど所在地は徳島ということを教えてくださった。
なんと、びっくり。
そうい言って走ること一時間もしない内に、午後6時半にはホテル「わらぐろ」さんに到着した。
一時間後に迎えに来てくださるので、先にシャワーを浴びた。
ここで問題発覚、コインランドリーが無かったのだ。
ユニットバスでまた洗濯することになった。相変わらず握力が無いため、絞りが甘く洗濯物は朝になっても乾いていなかったのは言うまでもない。

辻さんの迎えで居酒屋さんに行き、歓迎会をしていただいた。
久しぶりのビールで乾杯だ。
間もなく仕事帰りの奥様も加わり、さらに乾杯。
奥様はとても若くてびっくりした。美容関係のお仕事をされていらっしゃるのも分かる気がする。辻さん、家宝者です。仲睦まじいご夫婦、そして相変わらずの酒飲み川原兄さんとの楽しい夜は更けていった。

平成24年9月22日
洗濯物を乾かすために冷房を効かせていたため寒くなって起きる。
時刻は午前5時20分。
7時の迎えには少し早いが準備することにした。
いつものように足にテーピングを巻くが、今日は雲辺寺なので、ちょっと念入りに巻いてみた。
買ってあったサンドイッチを食べながらニュースと天気予報をチェックすると、今日も良いお天気だ。
肝心の洗濯物は半乾き。速乾のスポーツシャツとズボンはまあまあ乾いていたが、スポーツタイツと白衣はちょっと冷たかった。
歩き出せば直ぐに汗だくで濡れてしまうので、気にせず着替えることにした。
玄関前で待っていると早目に辻さんがやって来た。
昨日拾っていただいた雲辺寺登山口まで直行だ。
慣れた道なのかスムーズに午前7時半には登山口に到着した。

午前7時40分、ザックを車に残していざ雲辺寺アタック開始だ。
坂道を上がると急な階段があり、登ると高速道路が見渡せた。
そこからどんどん山道に入って行く。
足場の悪い山道を登る、噂通りの急な道が続く。
時には倒木もあり、跨いだりくぐったりもした。
山道が終わり車道に出た標高665のポイントを午前8時20分通過。
ここからは緩やかな登り坂の車道が続き、標高805のポイントに午前8時50分到着した。
ここで先回りしていた辻さんの車で休憩をとる。
汗だくで、冷房の効いた車内に入るとこれまた極楽浄土だ。
今日も暑いので「汗臭くてごめんなさい、シート汚しちゃいそうです。」私が言うと、辻さんは「そんなことは気にしなくていいから。」と優しく言ってくださった。
お菓子とお茶でエネルギーを補充し、直ぐに歩き出す。
車道から遍路シールに従い、また山道を登る。
視界が開けた午前9時20分、とうとう標高900の66番札所雲辺寺に到着した。
やったー!と心で叫んで辻さんと山門をくぐる。
すると階段の上には何本かのノボリがあり、何か書いてあった。
「 お ・ た ・ ん ・ こ ・ な ・ す ?」
私が読み上げると、辻さんに間違いを指摘された。「違う、おたのみなす。」
あら、まあ、お恥ずかしい、、、歳をとるとカタカナが読み辛くなったと思っていたら、ひらがなまで読めないなんてショックです。舌を出して苦笑いだ。
境内にはたくさんの団体遍路さんが参拝をしていた。
辻さんに続き本堂に向かう。
本堂の前でお経をあげる準備をしていたら、辻さんはそのまた奥へと向かう。一人だったら手前でお参りしていただろう。
辻さんの後ろでお経を唱え、家内安全をお願いした。
元来た道を戻り、大師堂へ向かう。大師堂では増田さんご夫婦、伊吹さんご夫婦、辻さんご夫婦の無病息災、そして川原さんのお仕事がうまくいくよう開運成就をお願いした。
売店の近くには「おたのみなすのこしかけ」の像があり、座ると願いを叶えてくださるそうだ。
座ってみる。そして記念撮影もちゃっかり辻さんにおたのみなすだ。
納経を済ませ、可愛い茄子のお守りを幾つかお土産に買った。
お寺の裏手にはロープウェイがあり、団体のお遍路さんが絶え間なく上がってきている。
とかく人気のお寺のようだ。
そして更に辻さんのお接待は続く。
次の大興寺までザックを運んでくださると言うではないか。
もう、こうなったらとことんお願いします、と深々と頭を下げて午前10時先に進むことにした。

 
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お気に入りの椿堂。納経所のお姉さんはキレイで優しい。

お気に入りの椿堂。納経所のお姉さんはキレイで優しい。


お接待の缶コーヒー。椿の手ぬぐいがとても可愛い。

お接待の缶コーヒー。椿の手ぬぐいがとても可愛い。


椿堂から雲辺寺に向かう道沿いの胡麻畑

椿堂から雲辺寺に向かう道沿いの胡麻畑


コスモスも綺麗に咲いていました。マイ金剛杖と記念撮影。

コスモスも綺麗に咲いていました。マイ金剛杖と記念撮影。


境目峠を越えた所だったと思います。大歩危、小歩危、お遍路ボケの私です。

境目峠を越えた所だったと思います。大歩危、小歩危、お遍路ボケの私です。


雲辺寺登山口まであと一息

雲辺寺登山口まであと一息


雲辺寺登山口。明日はいよいよここからアタック開始だ。

雲辺寺登山口。明日はいよいよここからアタック開始だ。


倒木だってへっちゃらさ

倒木だってへっちゃらさ


雲辺寺登頂を迎えてくれた遍路仲間の川原兄さん似のタヌキ

雲辺寺登頂を迎えてくれた遍路仲間の川原兄さん似のタヌキ


正しくは「おたのみなす」です。

正しくは「おたのみなす」です。


結構新しいのには驚いた。

結構新しいのには驚いた。


本堂。太陽の光が眩しくて幻想的な感じがした。

本堂。太陽の光が眩しくて幻想的な感じがした。

案山子 2014年02月07日 コメントNO:689

いゃ?、凄い久しぶりに覗いたら何か懐かしい長文が目に入り名前を見るとうさぎさんでわないですか。元気?(これだけの文章を書ける元気が有るみたい)そうでとりあえず安心しました。
良かった!

au-net.ne.jp

うさぎ 2014年02月07日 コメントNO:692

案山子さん

大変ご無沙汰しています、案山子さんもお元気でしたか?

また遍路に出られたのですね!
その後のお身体は順調に回復されていますか?
きっと今日のように寒い日は骨折の傷も痛むのでしょうね。
無理の無いよう、二度目のお遍路旅を楽しんでくださいね!

さて、私は新年を無事自宅で迎える事ができました。
昨年の11月には、食事も水すらも飲むことも出来なくなり、体重も小学生なみに落ちました。
しかし、持ち前の食いしん坊が功をそうしてメキメキ快復し、新年には通院にて治療を受ける生活に戻る事ができました。

後は免疫力を上げながら、歩行練習に励み、三月には四国入りしたいと思います( ̄^ ̄)ゞあくまでも、私一人の願望ですが(笑)

今度こそ、案山子兄さんとどこかの札所で会えるかな、、、。

au-net.ne.jp

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  • 年代:50代
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