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ラストラン

うさぎさんの道中記


作成日:2011年09月29日 訪問日:2011年09月30日
37番札所 藤井山岩本寺


27日火曜日

遍路仲間の宮本くんから、結願するという連絡を受け、この日を一日OFFにして、88番札所へ行ってきた。
感動の瞬間を共に迎えることが出来、お礼参りに1番札所へも行ってしまった。
通し打ちをし、36日で結願。
偉い、そして若いって素晴らしい。
出会った頃より、ずいぶんたくましくなっていたのには驚いた。
可愛い学生のようなあどけない彼の顔が、日焼けし、ヒゲもじゃで、熊ゴロウのようにむさ苦しい顔になっていたのだ。
1ヶ月も旅をしていると、ずいぶん変わる(笑)
良い意味で、ワイルドで男らしくなっていたのだ。


28日水曜日

さぁ、私の番だ。
感動の翌日、午後から、車お接待を受けたバス停まで戻り、最初から歩き遍路をやり直した。

宇佐大橋を渡り、36番札所青龍寺には午後4時45分に到着。
納経所の裏にある山道から、宿泊先である国民宿舎土佐に向かった。
急な坂を、えっちらほっちら登り、午後5時10分宿に到着。
海を眺めて立つ国民宿舎土佐は、チャペルもあり、古いがなかなか良い宿だ。
お風呂は露天風呂があり、食事も彩りもよく、女性には好評のようだ。
その夜の私は、珍しくあまり食欲がなく、ほとんど残してしまった。勿体ない限りだ。


29日木曜日

連日、睡眠不足だが、やはり直ぐに目が覚めてしまう。
午前4時、起きることにした。
5時前に出発しようと準備をしたが、外を見ると暗い。街灯がない山道と海沿いの道は怖いので、少し明るくなるのを待つことにした。
午前5時半、やっと白みはじめてきた空を確認し、出発することにした。
フロントの自販機で、お茶とバナナジュースを購入。

非常口から外に出るよう言われていたので、開けようとすると、カメムシがビッシリ、ガラスにくっついていて、一瞬たじろいだが、意を決して出発した。

横波スカイラインをひたすら歩く。
左手には大海原、素晴らしい景色を眺める。
緩やかな上り坂が続く。
日の出の瞬間は立ち止まり、元旦のように御来光を拝んだ。この時期の朝は涼しくて歩くには快適だ。
買っておいたバナナジュースを、朝ごはん代わりに飲みながらひたすら歩いた。

一時間半ほど歩いたところに、武市半平太像があり、御手洗いもある。トイレットペーパーもあった。
ここでトイレ休憩をとるが、座ることなく、直ぐに歩き出す。

須崎の遍路休憩小屋までシャカシャカ歩き、ザックを下ろして座ってみるが、お腹が空いて落ち着かないので、その1キロほど先にある『喫茶おとずれ』へ向かった。
時刻は午前9時20分。
入口は開きっぱなし。恐る恐る覗くと、客3人とお店のママさんが、一斉に私を見る。
どうしよう…入り辛いけど、後には引けない状態だ。
この旅、初めて独りで飲食店に入った。
どうやら度胸がついたらしい。
サンドイッチでも食べようかなぁ、メニューを見せて欲しいと頼んだら、無かった。
ストレートに、食べるものが欲しいと言うと『食べるものは無い』…そんなことがあるのだろうか。
不安な心を悟られないように、アイスコーヒーを頼んでみた。すると、アイスコーヒーは無い、ホットならある、とおっしゃる。
この際、何でもいい。早く飲んで出て行こう。
するとママさんが、モーニング付けれます、そうおっしゃるので、期待しないで頼んでみた。
するとどうだろう。
トースト、ポテトサラダ、野菜、卵焼き、お味噌汁が出てきたのだ。これを食べ物と言わずして、何を食べ物と言えようか。
あるじゃ~ん、心でつぶやいてみる。
意外に美味しい、しかも450円だった。これはオススメだ。

満腹遍路となり、再び歩き出す。食べ過ぎてちょっと気持ち悪くなったりもした。私の胃袋は、忙しい。
遍路シールに従い、休まずどんどん歩いた。

道の駅かわうそを通過し、そのすぐ近くにある『ショップたけざき』でお目当ての卵焼きとおにぎりのお弁当を買った。ここの卵焼きは安くて美味しいのだ。
お昼ご飯が楽しみだ。
お弁当をザックに入れて、再び担ごうとしたら、重過ぎて後ろにひっくり返りそうになった。
それを見ていたお店のお母さんが「大丈夫?そんなに重い荷物持って独り?」とても心配そうな顔で見る。
にっこり笑顔で、大丈夫です、と言うが、どう見ても足元がふらついている。頑張れ、自分。
お母さんに見送られながら、颯爽と歩きだす。
ちなみに、ザックにさんや袋を詰め込んだ重さは8キロだ。それにお弁当やお茶がプラスされる。
二回目にしては欲深い重さだ。

国道56をひたすら上ると、安和に到着し、遍路シールが右へ導く、いよいよ焼坂峠越えだ。
道行く地元のお母さんに声援をいただきながら、道は砂利道から落ち葉積もる山道へと変わる。
途中、工事していて、本来の遍路道には登れない。
迂回路をひたすら上がると、急に厳しい勾配の山道へ入っていった。
草が生い茂り、虫が飛びかう。一番苦手なパターンだ。
蜘蛛の巣に引っ掛かるたび、悲鳴を上げた。
崖崩れ、倒木、所々で難所があった。昼間とはいえ、薄暗い。女性はなるべく独りで行くのはオススメできない環境だ。
心細く、不安な時間が続いた。

一時間ほど歩いただろうか、やっと視界が開けてアスファルトの道になる。目の前には高速道路があり、ホッとする。
しかし、また砂利道の山道だ。しばらく歩いてやっと国道に出ることができた。
今日の仮の目的地、土佐久礼に向かう。ここに2時までに着くようなら、一気に37番札所岩本寺まで行こうと決めていた。

時刻は午後1時半、土佐久礼に到着した。この時点で36キロを歩いてきた。峠越えもあり、脚はふらふらだ。
でも、私は岩本寺を打ち終えたら、体調のことがあり自宅に帰らなければならない。
そして、私の遍路旅、岩本寺が最後の札所になるかもしれないのだ。
結願出来ない、そう思うと今日がラストラン。今までの集大成だ。
歩くことの楽しみ、苦しみ、辛くても、寂しくても、歩き続けよう。
この痛みを身体にたたき込み、ずっとずっと忘れない為にも、前に進もうと決めた。

休憩することなく、ひたすら歩き続けた。
夜になることを考え、2つある遍路道を諦め、真ん中の国道56を進むことにした。
久礼坂は厳しく、急な上り坂が延々と続く。気温は32度、風もなく体力はみるみる奪われていく。
通り過ぎる車はスピードを緩めることなく、容赦のない走りですれすれを通過する。とても恐かった。
身をすくめ、だんだん上がらなくなる脚を引きずりながら歩いた。
久礼第三トンネルに差し掛かるころ、飲み物も底をついた。自販機はない。
暑さ、喉の渇き、車の恐怖との闘いとなった。
もちろん、休憩するところはない。

そんな状態を2時間歩いただろうか、七子峠を越え、七子茶屋に到着した。
意識はもうろう。吐き気がする。
御手洗いと自販機があったので、座って休憩することにした。今回座って休憩するのは二回目だ。
時刻は午後3時半。37番札所近くの、まるか旅館さんに宿泊予約を入れる。

ここまで42キロ歩いてきた。
左足首は捻挫したのか、くるぶしが分からないくらい腫れていた。
ザックの紐が当たるところの鎖骨も腫れている。
あと、16キロ。
普通に歩くことが出来なくなっていた私には、辛く長い道程だ。
体力は既に尽き果てていた。
でも、私にはみんながついている。
伊吹さん、宮本くん、不良遍路さん、ソンちゃん、ツヅラちゃん、やまぴー、兄貴遍路さん、先達さん、みんなのことを考えながら、気力のみで歩き続けた。

みんなと歩んだ楽しかった旅を思い出す。
左足は完全に上がらず、ちょっとした段差にもつまづく。でも、気持ちだけはしっかりしていた。
不思議な時間が続いた。
痛みを感じなくなり、暑さ、寒さ、全ての感覚が無くなっていたのだ。
これが無?なのだろうか。

右手に遍路休憩所が見えてきた。途中、お接待でいただいた物をザックに入れるため、休憩することにした。
ふと、横の看板を見ると、岩本寺まで10キロと書いてあった。
もう少しだ。時刻は午後4時半、一時間に6キロ歩いていたのだ。
いつもより早いペースに驚いた。
でも、一度座ると全身に痛みが襲い、動けなくなった。

伊吹さん、宮本くんからメールが来ていた。
みんなが応援してくれる。
最後の力を振り絞って立ち上がる。ザックがなかなか担げなかった。
数分、ザックを背負うのにかかりながらも歩きだす。
夕暮れの国道を、ただひたすら真っ直ぐに。

道行く人、沿道のお家の人、すれ違う車の人、皆さんが頑張って、ご苦労様、と次々に声をかけてくださる。
そのたびに、うつむき加減だった顔を上げて、笑顔でありがとうございます、お礼を言う。

進め、進め、歩け、歩け、前へ、前へ、頑張れ自分、頑張れお遍路なのだ。

ゆういんぐ四万十に差し掛かる時、久しぶりにやまぴーからメールがきた。
現在58番を打ったという。みんな頑張っている。
私も休まず、歩き続けよう。

東窪川のバス停を通過する時には、すでに辺りは暗くなっていた。時刻は午後6時半。
真っ直ぐ行き過ぎて、窪川トンネルに入ってしまうところだった。
引き返し、呼坂トンネルをくぐる。程なくして、窪川駅に到着した。
明日の南風と新幹線の切符を買い、無事まるか旅館さんに入ることができた。
時刻は午後7時。
燃え尽きた瞬間だった。

兄貴遍路さんから電話をいただき、今日の報告をしたが、なかなか信じてもらえない。どじでノロマな私のことだから、仕方がないかもしれない。

歩行距離 58キロ
歩行時間 13時間半
携帯の万歩計 80,800歩
休憩4回

自分でも信じられない1日だった。
お昼ご飯用に買ったショップたけざきのお弁当を食べながら、ボーッと過ごした。

30日金曜日

疲れているはずなのだが、昨夜も独り旅館では眠れない夜を過ごす。
朝、4時からごそごそ動き始める。

7時半、宿を出発し、三十七番札所へ向かった。
門前で深く一礼、ゆっくり本堂に向かった。
祈願成就のろうそくを買い、火をつけた。炎はゆっくりと揺れて、見ていると涙が出そうになった。
しっかりとお経を唱え、ご本尊様に家内安全を祈願した。
大師堂では、ここまで無事辿り着けたことのお礼。そして、今日まで出会った遍路仲間、宿の方、お接待してくださった方、応援してくださった方の顔を独り独り思い浮かべながら、感謝の言葉、皆さんのご多幸と無病息災を祈り、私の最後の札所となった。


いま、南風特急に乗り、過ぎ去る四国を眺めています。
いつかきっと、またこの道を歩く日が来る事を願わずにはいられません。

たくさんの温かいご声援をありがとうございました。
とても素晴らしい経験、そして一生の宝になるお友達が出来ましたこと、ここに感謝の意を込めたいと思います。

この先、どんな人生が待ち受けていようと、一生懸命生きていきたい、そう思います。


本当に、ありがとうございました。
皆様の益々のご多幸をお祈りしています。

 
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青龍寺の裏の遍路道、国民宿舎土佐へ向かう

青龍寺の裏の遍路道、国民宿舎土佐へ向かう


喫茶おとずれに、是非おとずれて欲しい

喫茶おとずれに、是非おとずれて欲しい


焼坂峠、崖崩れ。もっと酷いところも多々ある。

焼坂峠、崖崩れ。もっと酷いところも多々ある。


遍路休憩所、あと少しだ。

遍路休憩所、あと少しだ。


ショップたけざきの卵焼きとおにぎり

ショップたけざきの卵焼きとおにぎり


三十七番札所岩本寺、左手の和菓子屋さんにも注目

三十七番札所岩本寺、左手の和菓子屋さんにも注目


皆とお揃いのストラップ、そして宝物の御守り

皆とお揃いのストラップ、そして宝物の御守り

はる 2011年10月01日 コメントNO:150

。・゚・(ノД`)・゚・。

dion.ne.jp

うさぎ 2011年10月01日 コメントNO:151

はるさん

コメント、ありがとうございます。
なっ、泣いてますか?
大丈夫ですか?

docomo.ne.jp

はる 2011年10月08日 コメントNO:155

遍路を夢見てる同世代です。同じ愛知県住みということもあり、うさぎさんの日記に吸い込まれるように読んでいました(笑)
とても羨ましいです。
人間模様がとても素敵ですね。
感動しました!

au-net.ne.jp

うさぎ 2011年10月08日 コメントNO:156

はるさん

日記、読んでいただき、ありがとうございます。
この年の頃になると、いろいろなしがらみがあり、なかなか旅には出れませんよね。
でも、機会があれば、ぜひ遍路旅に出てみてください。
はるさんにも、きっと素晴らしい出会い、そして人生観の変わる何かに出会えるかもしれません。

同じ愛知県、とても親しみが湧きます。
ともに旅したいです(^^ゞ
私の経験で良ければ、何か参考になることもあるかも知れません。疑問などありましたら、お知らせくださいね。

docomo.ne.jp

2011年10月11日 コメントNO:157

まさか9月にまた行ってるとは思いませんでした?
頑張って歩いたね?
すんごい道じゃん?

しばらくはゆっくり休んでまた歩き出す日を夢見て、まずは病気治癒を頑張って下さい。
いつも応援してるよ。

docomo.ne.jp

かきフライ 2012年04月12日 コメントNO:252

4月から再開しとるんじゃね。怪我せんよう広島から応援しとるよ。道中記の方にもアップしてつかあさい。

ezweb.ne.jp

うさぎ 2012年04月13日 コメントNO:253

かきフライさんへ

コメントありがとうございます。
お返事遅れてごめんなさいm(_ _)m
4月2日の午後から再開し、足摺岬手前8キロ地点から53番円明寺さんを打ち、養護院で区切りとしました。
今朝、13日に名古屋へ戻りました〜。
今回もたくさんの方々に助けられながらの、楽しい遍路旅となりました。
日記ですが、iPhoneからは日記機能が開発中とのことでリアルタイムでは書くことが出来ませんでした。
またゆっくり書いていきますね(^O^)
かきフライさん、広島から応援ありがとうございます!
コメントいただき、とても嬉しかったです。

ocn.ne.jp

はる 2012年04月18日 コメントNO:254

見つかってよかった~♪
気になってましたよ(笑)
前にも覗いたら変化なしだったので、大丈夫かな?と心配していました。
知らない間に結構進んでいたんですねー(^^♪
またうさぎさんの道中記が読めることを楽しみしております♪

au-net.ne.jp

うさぎ 2012年04月18日 コメントNO:255

はるさん

ご無沙汰しています。
お元気でしたか?
コメント、ありがとうございます。
うさぎは元気にしています。
まだ日記が書けていませんが、三月に一度チャレンジしましたが、体調悪化で三日間でダウン。今回はその再チャレンジでした。
治療を中断し旅に出ましたが、やはり無理は禁物でした。
私の遍路旅、まだまだ先は長いようです。頑張りますね!
いつも応援ありがとうございます!

au-net.ne.jp

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プロフィール

うさぎのアバター
  • ニックネーム:うさぎ
  • 性別:女性
  • 年代:40代
  • お住まい:愛知県
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歩き遍路で人生修行中。

二回目の遍路
平成26年3月19日春爛漫の四国を歩き始めて、平成26年5月1日に結願しました。
結願後は四国に円を描くため、そのまま10番まで下り1番札所まで歩き続け、平成26年5月3日にお礼参りを完了しました。
初めての通し打ち、喜怒哀楽の旅が終わりました。
応援してくださいました皆さん、ありがとうございました。

追記
平成26年12月23日高野山にて満願しました。

日記が未完成なので、一年以上経ちましたが私の遍路軌跡を最後まで書いていきたいと思います。
お休みしている間、たくさんの方から励ましの手紙やメール、コメントをいただきました。ありがとうございました。

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